日本の成功しているスタートアップ企業を中心にビジョンとミッションをリサーチしていると、ざっくりいうとビジョンには2つのタイプがあることがわかります。
ビジョンに理想の自社の姿を掲げる企業
グローバル イノベーション カンパニー
https://corp.rakuten.co.jp/about/philosophy/
すべての人の、「お金のプラットフォーム」になる。
https://corp.moneyforward.com/aboutus/mission/
インターネットやAIを活用し、永久ベンチャーとして世の中にデライトを届ける
https://dena.com/jp/company/policy/
ビジョンに理想の社会を姿を掲げる企業
世界で、一番便利な国へ
https://about.yahoo.co.jp/info/mission/
すべての人に、一歩先の働き方を
https://corp.chatwork.com/ja/mission/
優しい革命を起こす
https://campfire.co.jp/vision/
ビジョンやミッションの運用に正解はないものの、前者の企業たちはビジョンと言いながらも「自社を中心とした目的指向」になっているのです。
自分は最近転職をして、6社目にして2社目の会社に出戻りました。
このとき、初めて「何をするか」ではなく「誰とするか」で働く会社を決めました。
10年前に華やかなインターネッツを夢見てそこを退職した自分が知ったら「なんでまたここに?」とびっくりするような「出戻り」です。
そんな心境の変化に、いよいよ自分のキャリアも2週目に入ったことを意識したのでした。
その思いをさらに補強して、客観的にも納得させたのが、ご存知「納品のない受託」のソニックガーデン倉貫さんのブログでした。
チームとコミュニティの違い、会社・組織をどう捉えるか | Social Change!
ミッションによって集められたチームは、その使命が達成されたときに解散される。チームは活動(Do)である。ビジョンに共感して集まったコミュニティにはゴールもなければ解散もない。コミュニティは状態(Be)である。
チームの価値が、事業を拡大して経済に貢献したり、社会をよくするための外向きの活動であることに対して、コミュニティの果たす価値は、そこに居る人たちに安心と安全の場を提供することである。あくまでコミュニティは内向きに価値を提供する。
チームは目的を達成したら解散するが、コミュニティにはゴールがない。たとえチームが成功しても失敗しても、安心して戻れる場所がコミュニティになる。そう考えると、コミュニティとしての会社は、もはや住んでいる街みたいなものだ。
自分の中で「出戻り」といえばライブドア。2010年当時すでに、ライブドア事件後に出戻ってきたエンジニアたちが社内で即戦力として活躍している様子を見て、出戻りとはなんて合理的でポジティブなのかと感銘を受けると同時に、自分もいつかは「出戻り」をやってみたいと漠然と思うようになったのです。
そんな自分はきっとライブドアのミッション(やっていること)ではなくビジョンやバリューのようなコミュニティ的側面に共感していたのでしょう。
たとえスキルや経験や市場価値がおよばなくても、たまに手斧が飛んでいても、そこは居心地が良いカルチャーと価値観だったのです。
会社にはチーム型と、コミュニティ形のキャラクターがある(そして多くは両者のグラデーション)。どちらの性格が濃い企業なのかはビジョンを見るとよいし、スタッフの在籍年数/離職率/増加率/転職先など、そして出戻り数にも現れてくるでしょう。
飽くなき成長志向で次々とアップデートされるミッションでチームをモチベートするチーム型スタートアップで自分を高めるのか、確信する未来の世界の一員として安心できるコミュニティ型企業の一員として永く社会にコミットするのか。(あとはそのどちらかのビジョンを持った会社を起業するのか)
どちらもあっていいし、個人も企業もチーム型からコミュニティ型へ、ステージと時代に応じて変わるときは変わっていく。
自分はいま、コミュニティ型のスタートアップに期待しているわけです。たとえば
VCからの資金をほとんど入れずに大きな増員をせずに着実に太く成長するWebプロダクトとか、
ファウンダーの価値観がそのままブランドコンセプトとして消費者に支持されている新興D2Cブランドとか。
さて、資本主義経済にフィットして常に飛躍的な結果と成長が求められるチーム型の組織に比べて、お互いが共感して心地よく長く続くことを大事にするコミュニティー型組織は、楽して食べていける(お給料がもらえる)会社なのでしょうか?
おそらく答えはNo。ビジョンで繋がる良きコミュニティ型企業の構成員には
自分にあったキャリアポートフォリオのデザイン力
会社の報酬アップを前提にしない生活力
のようなセルフマネジメント&コントロール力が求められるようになるでしょう。
経済的にも社会的にも精神的にも、会社「だけ」を拠り所に頼らずにしなやかに生きていけるスタッフは、コミュニティ型企業にレジリエンスをもたらすことができるからです。
これはスキルや市場価値が高い人(≒高給取り)だけを指すわけではありません。帰属心は強い一方でスキルや労働料や報酬に多様性があるのがコミュニティ型組織。長く続くコミュニティにはいろんな役割の人やわけありの人がいるのです。
ひとつの収入に頼らない、働き方は与えられるものではなく自分でデザインする、こういったことは一昔前なら「フリーランス」「ノマド的」と言われていたワークスタイルでしたが、VUCAの時代と言われる今日には、会社員であることの価値観、働くという行為への姿勢のひとつに変わってきていたのでした。
これまで会社と言えば、ミッションの元にチームとして取り組むものだと常識として考えられてきた。そのため、コミュニティ的な会社を経営していると不思議に思われて、居心地の悪さを感じることがあっただろう。
しかし、これからはコミュニティのような会社が存在していることが認知されていき、もう一つのスタンダードな会社の形になっていけば、そういった会社づくりを目指す人が増えてくるかもしれない。
必ずしも大きな目標を掲げなくても、仲間と共に起業して居心地の良い場所をつくることも肯定される世の中になっていけば、今の会社や組織にしがみつくことなくチャレンジしやすくなるかもしれない。
こういう考え方を持つひとたちと、緩やかにこれからのスタンダードをデザインしていきたいものです。
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