AirPods Pro を使い始めてからもうすぐ5年。今やノイズキャンセリング機能がないと生活できない体になっています。
たとえば先日のジャック・ホワイトの来日公演。気合を入れて50分前からオールスタンディングのフロアで待っていたんだけど、ノイキャンがなければとてもメンタルが持たず。
ノイキャンでやり過ごしたいのは爆音で鳴らされるSEでも、都会のライブハウスにありがちな外国人たちの嬌声でもなく、すぐ近くで立っているカップルやグループの会話だったりします。
至近距離で話される他人のどうでもいい会話を、耳と脳が処理しようとしてしまうのがしんどくて。
自分の耳は聞きたくない声をやり過ごすことが苦手。そして、複数の音の中から聞きたい声を聴き分けることはもっと苦手で、こちらの方がもっと深刻だったりします。
🤔食洗機が回っている台所で家族とテレビ。自分だけ何を言ってるかわからない(ボリュームの抑揚が強い映画とかアニメは特にダメ)
😣オフィスで電話。向こうで言ってることがよく聞き取れないし何なら自分の声もわからなくなるので大声になって自己嫌悪
🫠居酒屋で。何故みんなの会話が成り立っているか不思議に思いながら作り笑い(もちろん発言はできない)
😰参加の義務がある立食パーティーやミートアップ。頑張って聞き取ろうとしたり、声を張ったりするとMPを激しく消耗する
これ、静かな部屋や映画館など、他の音がなければ問題なく「わかる」んです。周りの音や声と混ざると、とたんに理解できなくなる。
そんな自分のポンコツな耳(というか脳)の症状にAPD(聴覚情報処理障害)いう名前があるのを知ったのは、わりと最近で5年前。
聞こえるけど聴こえない、自分の症状がちゃんと類型化されていて、なんだか救われたのと同時に、これまでの人生損していた気にも。
ずっと「それ」は自分の弱さのせいだと考えていた。コミュニケーション能力の欠如、引っ込み思案、人への関心の無さ、○△■✕…
もっと早く知っていれば、もっと自分を肯定することができたのに―――
ノイズキャンセリングとAPDの関連性が少し話題になりましたね。
ノイズキャンセリングヘッドホンによって一部の層の音が遮断されることで、脳は「何に集中すべきか」を理解するのが困難になるのかもしれないと述べている。電車の騒音や車の警告音、クラクションの音といった日常音を遮断することによって、脳は騒音を「自らブロックすることを忘れる」可能性があるという。
近年、ノイズキャンセリングヘッドフォンの普及が進む一方で、それが子供の聴覚発達に影響を及ぼす可能性が指摘されている。特に注目されているのは「聴覚情報処理障害(APD)」との関連性だ。APDは、音自体は聞こえているのに、音の識別や理解が難しくなる症状を伴う障害である。
ノイズキャンセリングヘッドフォンは子供の聴覚に影響を与えるのか?最新研究が示す意外な可能性 | Gadget Hack
先天的か後天的かは問わず、耳が悪くなくても聞き分けが苦手な人がいることを知ったり、聞き分けできない自分が特別じゃないんだ、と受け入れられる機会が増えるのはポジティブなこと。
いま、10代20代の人たちにはどうか、人それぞれいろんな不完全があることを肯定できる世界に生きてほしいものです。
そして今、期待を寄せているのは、次のAirPods Pro。
8年ぶりに新調したiPhone16 Proに驚きはなく、Apple Watchはちっとも活用できていない自分にとって、次のAirPods Proこそがまだスペースノイドにはなれない地球人が覚醒するための大本命。
次期バージョンに搭載されるかもしれない「驚くような新体験」に期待して、今は買い替えをぐっと我慢している。
APDの傾向がある自分がほしいもの。
必要な声を聞きやすくしてくれるボイスフォーカス機能。家族や友人だったらあらかじめ登録しておくホワイトリストが確実だろう。一時的な対象ならデジカメのようにフォーカスを選択してロックオンするのもかっこいい。
もうひとつは、苦手な声が耳、いや、脳に入ってくるのを和らげたり遮断したりするボイスキャンセル機能。対象はその場に居合わす他人であることが多いから、先んじてキャンセルしたい声の性質や特徴を設定しておく方が安全だろう。
これで、ファミリーがあふれるフードコートでもお互い穏やかに食事ができるし、オーバーツーリズムな京都のお寺でも安らかに庭と向かい合って心の洗濯ができる。
iOSの動画のプロダクション(オーディオミックス)でこれだけできているのなら、FaceTimeで自分の音声のノイズ処理でこれだけできているのだから、イヤフォンから入っている声をライブで処理することはすでにできるはずだ。
もっとも、iPhone(AI)とつながっているんだから、こうした機能もきっと、使ううちに自分に合わせて最適化されていくんだろう。
妄想が捗りますよね。
しかし、こういった機能が登場すれば、「これだから若者は~」「助け合う社会の協調性が〜」といった、テクノロジーへの安易な依存を批判する声が上がることも想像に難くない。
・・・いや、そういうことじゃなくって。
こういう技術の助けを借りないと人間らしく生きられないくらいには、世の中が(少なくとも人がたくさん集まる場所は)騒々しくなりすぎている、と私たちは申し上げたいのです。
ただ、聞きたい声を理解しやすく、聞く必要のない声を遠ざけるのを手伝ってほしいだけ。
もしかするとそんな便利な機能は、テスラのヒーターのようなサブスクのオプションになってしまうかもしれない。あまり使えていないスポーツジムかオンライン英会話のサブスクは、やめることになりそうだ。
サブスクになったら、たくさん使わないともったいない。在宅リモートワークで引きこもっていては、使う機会がそれほど多くない。
だったらもっと街に出て、人と話そう。
新しいAirPods Pro が僕の長年の拗らせを少しはマシにしてくれるかもしれない。
おまけ)10ヶ月ぶりのDIYオリジナル曲です。ご笑聴ください。