6月は忙しく、ニュースレターは1本しか出せませんでした。その代わりに、忙しかった理由のひとつである、ミートアップイベントでのプレゼンテーションの収録をポッドキャストでお届けしましたのでよろしければテキストだけでもご覧ください。
📌 今号のトピック
Web2.0の贖罪(1) 🎣
食べることの戦略 ♟️
クリエイティブセレブリティからみたニッポン 🦌
京都から小さなチームでやる矜持 🖋️
京都ではオープンエンドで話したい 👴
1. Web2.0の贖罪(1) 🎣
突然ですが、titleタグは、SEOのさまざまなバッドノウハウと、醜いクリックベイトを生み出したという意味で罪深き存在だと思っています。
そんな状況を少しはマシにしてくれるかもしれない、そして(既得権益からの抵抗は大きそうなので)応援したい試みがこちらのニュースアプリ。
そこでシストロムとクリーガーは、この問題を緩和する未来的な方法を考案した。ユーザーが釣りっぽい見出しの記事を報告すると、Artifactはその記事を「GPT-4」に送る。そして「GPT-4」のアルゴリズムが記事の内容を解析して独自のタイトルを生成するのだ。そして「GPT-4」が生成した記事の内容のより説明的なタイトルが、ユーザーのフィードに表示されるのである。
🔗 Instagramの創業者が手がけるAIを駆使した新ニュースアプリ「Artifact」とは | WIRED.jp
ストレートニュースのタイトルは全部AIが作るようになれば世の中はもっと良くなるのに。
それはそうと、Instagramが登場した時、たった数人の開発チームで「写真フィルター」の目新しさの一点突破でどんどんスマホユーザーを熱狂させていった快進撃に、当時、チーム内で写真共有アプリを作ろうとしていたいち開発者として嫉妬をしたのが懐かしくなりました。
こういう突然変異的に現れてブレイクするアプリやサービスに今もまだ期待しています。
2. 食べることの戦略 ♟️
1回やれば気が済むかなと思いきや続いているのが、こちらのなんの役にも立たない実験的なポッドキャスト。
続けることで見えて来たのが、自分の「食べる」という行為への妙なこだわりです。この回ではマイクを前にして頭に浮かんだ「ラーメン+お新香で戦略が生まれる」論を熱く語ってしまったのですが、タイムリーにも同じ性癖を持っていそうな方がネットで見つかりました。
小学生3年生のころ、クッキングパパで、荒岩主任の部署の後輩・田中くんの理想のカツ丼の食べ方を見てから(画像はクッキングパパ公式Twitterからのものです)ご飯を食べるときに、このように道筋を考えながら、作戦を立てながら味わうのが大好きになりました。
この質問者のこだわりの吐露もなかなかのものですが、それに輪をかけてやば、もとい深いのが続く料理専門家イナダさんの長いレス。
最後に、これが割と大事なのですが、意思を込めたストーリーに準じて食べ進む中で、この「食べ切りルール」は、より緻密な計画性を要求します。それは単なる制約ではなく、まして単なる形式主義ではなく、ストーリーの起伏をより鮮やかなものにすることで、食事のリズムにダイナミズムをもたらします。
たかが食べるだけのことに、何を言っているんだろう。インターネッツではあらゆるところに芸術が生まれるものですね。精進せねば😌
3. クリエイティブセレブリティからみたニッポン 🦌
始まった当初はわりとちゃんと聴いてて、政治家がゲストに来たあたりからは全部は聞かなくなったこちらのポッドキャストなんですが、雑談回的なこのエピソードがとても良かったのでシェアします。
彼やその周りの海外のクリエイティブな方々がいま気づいた、日本の風土、文化、暮らしの希少性や面白さみたいなのが、ビジネスや投資ではなく趣味起点で語られていて、こういう見立てをするのか!と為になりました。
また、そのJOIさんがパネラーとして登場した先日のIVS Crypto でのこちらのセッションで、
「拡大を至上命題とする西欧的な価値観ではなく、サステナビリティを尊重して元気に生きがいを持ってサバイブすることを美徳とする日本的価値観の方が、地域DAOが社会実装される可能性・期待値がある」とおっしゃっていたのは、このときの国内巡りで得た感覚も反映されているんだろうな、と感じました。
そして、自分が今やってる仕事の価値づけをしてもらった気もしたのでした。
4. 京都から小さなチームでやる矜持 🖋️
自分は出版業界の内部課題、本づくりの面白さ、などについては門外漢なのでただただ影から応援している存在である京都のミシマ社さんの対談記事を紹介します。
🔗「独立系出版でメシ食えます?」17年続けるミシマ社に訊いた一冊の価値 - イーアイデムの地元メディア「ジモコロ」
この記事の主題は「出版を生業とする厳しさ」なのですが、最後のところで、スモールチーム・スタートアップとしてのミシマ社の決意にグッと来たので少し引用します。
結局、『おもしろい』という思うことを会社としてやり続けるために、僕は編集者というかクリエイティブの仕事一点突破でやるのにも限界が来ているというか
大きなクリエイティブ企業になっていけば、お金は動くんだけれども、僕がやりたいのは、もう少し職人気質で、『おもしろい』もので。小さい会社やもっと小さい組織単位でできないのかなということを考えているのですが、けっこう難しい時代に来ているなと感じていて
社会としての正しさであったり、時代の流行であったり、つまりは“マジョリティを背景にしたものさし”みたいなものとの戦いですかね。
実に京都らしい。
10年前なら「そちらの業界は成長の余地が少なく旧態然としていて大変ですよね」と言えてたかもしれないけど、今やインターネットサービスも「自分たちの面白い」をビジネスにしようと思ったら、総取りの勝者という茨の道を目指すか、メガベンチャーの庇を借りるか、受託チックな別口で収入を確保するか、みたいな選択肢になりつつあり、独立を保ちながら小さく長く続けることが存外難しくなっていますよね。
5. 京都ではオープンエンドで話したい 👴
今、局地的に注目のポッドキャストサービス・LISTENを開発する近藤さんが「僕はオープンエンドのコミュニケーションが好きなんですよねえ」とおっしゃっているのを聞いて、自分が7年前に取材を受けたときに話したことを思い出しました。
そうですね。ただ、働く周辺の意識について言えば、ちょっとした文化差があります。たとえば、「時間」に対する意識です。予定をガチガチに詰め込むのではなくて、「1日雑談で終わる日もあっていいよね」みたいな余裕を持たせています。
京都の人って、打ち合わせのおしりをあんまり決めないんですよ。だから、分刻みの予定は入れられないです。今では職人さんをはじめ、違う業種の方と話す機会も多いです。そういう人たちに「今日のミーティングは30分でアジェンダはこれです」みたいなの、通用しないじゃないですか。「予定に縛られるのが無粋」って意識が、結構強いと思います。
🔗 「ズルい街」京都を通して考える、これからの働き方 | WORK MILL
それが京都のコモンセンスだ、とまでは言いませんが、Webサービスであれ、コワーキングスペースであれ、そんな価値観を下敷きにした、ハッスルしないサービスが増えれば、訪れる人の京都への印象も変わるかもしれませんね。
ちなみに、オープンエンドな(?)ポッドキャスト取材形式をとったLISTENのインタビューはこちら。
🔗 ポッドキャストをAIで文字起こししてくれるサービス「LISTEN」登場 - INTERNET Watch
ただ、じゃあ本当に知り合いしかいない場所だけで閉じこもっていたいかっていうと、やっぱり人って、本当はもっと人と繋がりたいって思っていると思うんですよ。そういうこともあるので、どこか安全な場所を見つけてでも何か発信をしたいし、人と会いたいし、もっと繋がりたいって思ってるみたいなところは。
それはやっぱり、 Twitter(的なものも含む) じゃないと思うんですよね。
気がつけば紹介した5つのうち3トピックがポッドキャスト絡み。自分はポッドキャスターではないものの、先日のプレゼンテーションを通して
声出しして練習することが楽しくなってきた
自分ももっと上手に喋りたいという向上心が目覚めた
書くことだけではなく話すことで共感してくれる人を増やたくなった
など、もっと発信する側に回りたい欲も出てきました。
一方で、音質や機材の追求には、どれだけ周りで熱く語られていてもいまのところあまり食指が動かず。それはカメラ好きと言いながら8年前のLUMIXを愛用して、アングルやシチュエーションの工夫を楽しむことで自己満足しているアマチュアリズムと近しいものかもしれません。