WBC日本が優勝しましたね。
サッカー、それも欧州サッカー以外はほとんど見ない自分も、先日の準決勝と決勝は、いちスポーツファンとしておおいに感動しました。
少年時代の記憶でルールを思い出しながら観戦したベースボールは、あまりにも久しぶりだったので、グローバルスポーツとして普段見ているフットボール(欧州ではサッカーと言わない)との違いが際立って見えました。
ひとつは巨額の予算で演出しまくっているワールドカップやUEFAチャンピオンズリーグと比べて、放映での演出がシンプルがゆえに、勝利の余韻に酔う選手たちの様子や、試合のリアルな雰囲気をひきたたせていると感じたこと。
ふたつめは、監督も審判もみんな「わかっている」こと。試合の最後はヒーローが登場する。同じチームの同僚が最後の打者になる(これは偶然だろうけど)。真っ向勝負は三振で終わる。これがサッカーになるとこんなに美しく試合が終わることは稀です。
真剣勝負でありながら最上級のエンターテイメントを共創しようとするベースボールは、さすがアメリカを体現するスポーツだなあと感心したのでした。
今週のOpen&Share
1️⃣ 文化に根付きすぎたスポーツの行く末
そうなんです、サッカーはいわゆる「塩試合」が多いんです。90分を通して0-0の引き分けで終わって、どこがハイライトだったかすらもわからないようなゲーム。
これが、両チームの守備戦術やディフェンダーの能力が素晴らしい結果としての無得点なら玄人好みの好ゲームと言えるのですが、負けたくない意識が強すぎて時間稼ぎをしたり、悪質なファールで挑発してみたり、審判が明らかに片方よりのジャッジをすることで試合が荒れたり。実質プレー時間が90分の半分もなく、スポーツではない何かばかり見せられることがたびたびあります。
今シーズン、そんな塩試合が多いことで定評があるのが、自分が応援しているインテルがいるイタリアセリエA。とりわけミラノダービー(インテル対ACミラン)、ローマダービー(ローマ対ラツィオ)、イタリアダービー(インテル対ユベントス)のような注目のカードで塩試合が見られがち。
DAZNのセリエA解説者・細江さんがポッドキャストで(ポッドキャストだから?)この問題にズバリ言及していました。(30分すぎくらいから)
SerieA FREAKS Voice #4 : セリエA復権への光
ざっくり言うと
カルチョが人生の多くを占めているイタリア人には譲れないプライドと美学がある。
負けるとチームもファンもめちゃくちゃ皮肉られる文化
大事な試合ほど何でもいいから勝てばいい(負けたくない)になる
そんなカルチャーが塩試合を生み出してしている
という具合。
同じ週末にスペインで行われたエル・クラシコがエキサイティングな好試合だっただけに残念でなりません。
2️⃣ 金絡み・政治絡みの不正が多すぎるスポーツ
ここ数年ヨーロッパの主要リーグはお金にまつわる不正疑惑とその処罰のニュースに溢れています。
イタリア・セリエAでは過去10年間で8回スクデット(1位)を取っているユベントスが選手給与や移籍金を巡る不正会計が明るみになったことでリーグ途中に勝ち点-15の処分を受けました。
イングランド・プレミアリーグでは、昨年首位・今年2位を走るマンチェスター・シティーに報酬や広告収入など100を超える規則違反の疑いが。
フランス・リーグアンではメッシ&エムバペ&ネイマールを擁するパリ・サンジェルマンもファイナンシャル・フェア・プレー(FFP)違反を指摘されて、勝ち点剥奪や移籍の制約などの制裁が課される可能性があります。
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最後にスペインではバルセロナが揺れていまして、
過去に、審判協会関係者が保有する会社に用途がはっきりしない金額を断続的に支払っていたことで審判買収の疑いが浮上。これがメッシ在籍時の黄金時代も含む18年にわたっていたということで、他のクラブからの非難と、過去にさかのぼったどのような処罰がくだされるのかという関心が集まっています。
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東欧のリーグや代表では政治家とのと癒着も日常茶飯事らしいですし、サッカーが民族や国家の長い歴史そのものと切り離せない営みになっているもともとの背景に、近年は中東の資本流入によるビッククラブの成金化が合体して、不正の規模もえげつないことになっています。
3️⃣ 格差が格差を生む構造
世界中にサポーターを持ち勝利を義務付けられたビッククラブほど、巨額の移籍金1と年俸2を払ってトップクラスの選手を保持するレースから降りることができないのが今日の欧州サッカー。
その資金は自国以外の地域での放映権収入や、トーナメント勝負のチャンピオンズリーグでの賞金が充てられていて、ビッククラブは都市を代表するサッカークラブと言うよりはグローバル大企業として運営されています。
サッカーをグローバルビジネスとして経営するビッククラブと、伝統的な地域密着の事業として運営するその他のクラブが同居する国内リーグ。このスタンスの違いが、欧州スーパーリーグ構想のようないびつなアイデアを正当化しています。
欧州サッカー界は「持続不可能」 スーパーリーグ推進派が警告 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
ご説明しますと・・・
うん、だいたい合ってる。
4️⃣ 欧州主導のサッカー界、日本代表への弊害も
ウズベキスタン、パラグアイ、ブラジル、ガーナ、チュニジア、アメリカ、エクアドル、カナダ。これはサッカー男子日本代表が、2022年に親善試合や強化試合で対戦した相手なのですが、見事にヨーロッパの国がありません。この年はワールドカップでドイツ・スペインと当たることがわかっているのだから、普通に考えると直前の練習試合では、デンマークやポルトガルのようなスタイルの近い国や、本大会に出れなかったイタリアやスウェーデンのような欧州の強豪国と対戦しておくべきです。(というか見たかった。。)
それができない理由は、UEFAネーションズリーグという新しい欧州の大会が2018年より始まって代表ウィークに親善試合が組めないから。
それ以外にも、FIFAや各国のサッカー連盟もあの手この手で試合数を増やして興行収入を増やすことを画策していて、チームの強化や選手のコンディション調整など、サッカーの試合そのものを魅力的にすることは二の次になっています。
日本代表と戦うウルグアイ&コロンビアは「勝ち組」、アルゼンチンは「見世物」 混迷する世界の代表戦事情|海外サッカー|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva
5️⃣ 独占資本主義と不可分になってしまったグローバルスポーツ
スポーツと地域を食い物にして私腹を肥やす国際組織といえば、IOC(国際オリンピック委員会)がよく知られていますが、サッカーワールドカップなどの興行を取り仕切るFIFA(国際サッカー連盟)会長も相当のやり手だそうです。
サッカーW杯はアメリカに売り渡される?|FIFA3.0?? 2026年、サッカービジネスはどこへ!?(3/3)- メタバースえとせとら / Metaverse etc
どちらがより悪どい、もとい優秀なビジネスマンなのかは置いといて、以下はポッドキャストを聞いた自分のメモ。
FIFAやIOCは国民や国土を持たない独占資本主義の帝国のようなもの
試合をすればするほど儲かる。選手は石油のような資源として争奪され、消費される存在になった
ひとりからでも発信ができる音楽にはクリエイターズエコノミーが成立する可能性や希望があるが、スポーツは組織化集約化されないと広がりを作ることは難しい
次のワールドカップはアメリカを含む北中米での開催が実現します。複雑な文化的・経済的背景・階層構造で歪んでしまったヨーロッパ主導のフットボールが、最後の巨大市場であるアメリカに本格進出して飲み込まれることで、ベースボールのポジティブなスポーツマンシップとショーマンシップと程よく中和されれば、FIFA会長のゴリ押しも、偉業として後世に残るかもしれませんね。
ちなみに、「メタバースえとせとら」は番組名の印象ほどメタバースの話はしてなくて、テクノロジーの社会実装やファンダムエコノミーの展望など幅広い話題が展開されるポッドキャストでオススメですよ。
今週はサッカーのサッカーではない話ばかりをお届けしましたが、自分はそんな清濁を併せ呑んだ上で、欧州フットボールが大好きなので、これからもファンを辞めるつもりはありません。
・・・とか言ってファンが甘やかすからからダメなんだろうなあ😌
2019年秋にイタリア・ミラノ、インテルの本拠地サンシーロスタジアムで7万人のサポーターの1人として試合観戦したときの写真です。隣のシートでは80歳を超えたおじいちゃんが家族3代でインテルを応援していました。こちらは美しい方のサッカー文化ですよね。
欧州での2トップはカタール実業家がオーナーであるPSGの選手で、エムバペが1億2800万ドル(約186億円)、メッシが1億1000万ドル(約160億円)。そしてサウジアラビアのクラブに移籍したC・ロナウドの総年俸は約2億ユーロ(約281億円)と言われている。